氷の美女と冷血王子

待っている時間は、意外に長く感じる。
そんなに多くの人が出入りする店では無いから、数人の店員とただ待つのは正直苦手だ。
女性と上手に会話を楽しめるタイプでもないし、きっと気難しそうな男に見えていることだろう。


「お待たせしました」

そう言われて振り返った先にいたのは、ワンピース姿の彼女。

「きれいにできましたでしょ?」
オーナーの楽しそうな声。

俺は言葉が出なかった。

いつも地味なスーツを着てほぼすっぴんでもキレイだと思っていたのに、これは反則だ。
目のやり場に困る。

「どうですか?」
無言の俺に、彼女が聞いてきた。

「うん、いいよ」

とっても素敵だ。
飾り気の少ないシンプルなオレンジ色のワンピースが、よく似合っている。
髪もハーフアップにして少し巻き、化粧もしたらしい。

「なんだか恥ずかしいのですが」

「いやよく似合ってる」
君のために作った服に見える。

「とっても素敵ですよ」
オーナーもニコニコしている。

「良かったら1枚写真を」
言いかけた店員を、オーナーが目で制した。

確かに言いたくなる気持ちもわかる。
そこら辺のモデルよりも何倍も綺麗だ。
ただ綺麗なだけでなく、気品がある。
すごいなぁ。

「お支払いを」
カバンから財布を取り出そうとする彼女。

オーナーが俺を見ている。

「いいよ」
俺は、そっと彼女の手をつかんだ。

無理矢理連れてきた以上、払わせるわけにはいかない。

「いえ、でも」

「いいから。こんなところで恥をかかせるんじゃない」
耳元に顔を寄せささやいてみた。

「専務、やめてください」
恥ずかしそうに、顔を赤くする彼女。

それがまた色っぽい。
マズいな。
今日の俺はどうもおかしい。


「行くぞ」
少し強引に腕を引き、俺たちは店を出て大通りを歩き出した。