氷の美女と冷血王子

ハアハアハア。

走って専務秘書室まで戻ってきた。
幸い誰に会うこともなく、誰にも見られなかった。
しかし、

「はあぁー」
大きな溜息。

これ、どうしよう。

たまたま今日はベージュのスーツを着ていた。
せめて紺か茶か、もう少し濃いめの色を着ていたら目立たなかったかもしれないけれど・・・
上着の胸元から全体にかけて茶色いシミが広がっている。
これはどう頑張っても誤魔化しようがない。

せめてもの救いは、専務がここにいないこと。
もしいたら大騒ぎになったことだろう。
考えただけで恐ろしい。

「よし、ウジウジしていてもしかたがない」

私は今できることをしようと、スーツの上着を脱いだ。
下に着ていたのは薄手のタンクトップ。
とてもこの格好で外へ出ることはできないけれど、今の時間は誰も入ってくる心配もないはず。
だから、遠慮はいらない。

とりあえずできることをやってみようと、私は濡らしたタオルで即席の染み抜きを試みることにした。