氷の美女と冷血王子

「それで、私は何でここへ呼ばれたの?」
緊張も解け遠慮もなくなって、思っていたことを口にした。

「何だと思う?」
逆に聞かれ、今日のことを思い出す。

「私のせいで専務の立場が悪くなったから、説教?」
「違うよ」
「じゃあ何?」
他に呼び出される覚えはない。

「麗子に謝りたかったし、お礼も言いたかった」
「お礼?」

お礼を言われるようなことはしていないと思う。

「麗子が来てから、孝太郎が人間らしくなった」
「そんな・・・」

「あいつは鈴森商事を継ぐ人間として育てられてきたからね。ずっと自分の感情を隠して強がって生きてきたんだ」
「うん」
それは私も感じている。

はじめは私だって、イヤな奴だなって思っていたんだから。
でも一緒に仕事をするようになって、真面目に手を抜かず一生懸命取り組む専務の姿に見方が変わっていった。
あのビックマウスも、かわいくない態度も、時々暴君なのも、精一杯虚勢を張っているんだと気がついてしまった。
今までずっと孤独だったんだなって思えて、なんだかかわいらしくさえ感じている。


「孝太郎の側にいてくれて本当にありがとう」
徹は立ち上がり、私に向かって頭を下げた。

「徹、どうして」

何でそんなことをするの。
私、泣きそう。

「1度きちんと言いたいと思っていたんだ」
「だからって、わざわざ呼び出さなくても」

お陰で専務は機嫌が悪くなって、ここへ来るのも大変だったのに。

「こうでもしないと、麗子には近づけないだろ。ずっと側で見張ってる奴がいるんだからさ」
とても楽しそうに、徹が笑った。

あはは、確かに。
一見クールな顔をして、かなり粘着体質だものね。

「何かやりにくいことがあれば遠慮なく言うんだぞ。孝太郎に言えなければ俺に言ってくれ。きちんと対処するから」
「うん」

「1人で解決しようとするなよ」
「わかってる」
私にそこまでのスキルはない。

「約束だぞ」
「もー、しつこい」
この人もかなりの心配性みたいね。