氷の美女と冷血王子

その時、
バンッ。
大きな音をたてて開けられた店のドア。

ん?
当然、視線は入ってきた人物に集中する。

「いらっしゃい」

声をかけようとしたママを無視して、彼女に近づく女。
ちょっと派手な化粧の若い女が店の中を横切っていく。

何?どうした?
店にいた客はみんなそう思っていたと思う。
でも誰も、声をかけることができなかった。

「あんたっ」
外見からは想像できない声を上げた女が彼女の前まで行き、

バンッ。
いきなり平手を見舞った。

「何を」
するのよと言いかけた彼女に、
バンッ。
もう一度手を振り下ろした女。

「この泥棒猫。ちょっと綺麗だからっていい気になるんじゃないわよ。彼はね、遊びまくっているあんたとは違うの。ちょっかいを出さないでちょうだいっ」
キーンと響く高音が店内にこだまする。

さあこの状況をどう納めるのか。
意外なほど冷静な俺は、頬を赤くした彼女を見ていた。


「もういい?」
冷たい目で、言い放った彼女。

「え?」
目を丸くする女。

「気が済んだなら帰って」
「あなた・・・」
悔しそうに唇を噛みながら、それでも彼女を睨み続ける。

「何をどう思ったのか知らないけれど、ここで騒がれるのは営業妨害だわ」
あくまでも落ち着いた声。

すごいな、全く動揺しているように見えない。

「ふざけるんじゃないわよ」

パシャッ。
女が近くにあったグラスの中身を彼女にかけた。

「・・・」
それでも無反応な彼女。

さすがにここまで来ると、自分が劣勢なのは女にも分かったらしい。

「今度やったら許さないからっ」
捨て台詞を吐いて、女は店を出て行った。