氷の美女と冷血王子

彼女が来てから1ヶ月半。
すっかり俺の専属秘書が定着して、社の内外問わず彼女の顔が売れていった。

「ああ、これが噂の美人秘書さんですか」
なんて感嘆の声を上げる来客は1人や2人ではない。
その声を聞くと、俺はなぜかイライラしてしまう。
だからつい、
「青井君、ここはいいから」
彼女を部屋から出そうとするのが癖になった。


「失礼します」
今日も、社内会議出席者用のコーヒーを置くと彼女は出て行った。

「相変わらずべっぴんさんだな」
会議に出席する河野副社長が、彼女の後ろ姿を視線で追っている。

クソッ、見るんじゃない。
なんで、男はみんな彼女を見ると目で追うんだ。
社内でも、取引先でも、俺はイライラばかりしている。

「あれ、専務。そんなに怖い顔をしないで下さい。せっかくの色男が台無しだ」
ハハハハ。
と高笑いしながら、俺の前で足を止めた河野副社長。

元々対立気味だった俺と河野副社長だが、ここのところは露骨に攻撃的な態度に出られることが多くなった。
よっぽど、俺のことが気に入らないらしい。

「専務、一体どこであんな美人を見つけてきたんですか?」

きっと本心では、『綺麗なだけのお飾りの秘書を』とあざ笑いたいんだろう。
この時代錯誤の遺物には女性はみんな支配される側にしか映らないらしいから。 

「青井君は私の秘書です。その能力があると私が判断したから来てもらっていますので、下品な言い方はやめてください」
「美人を美人と言って何が悪いんだ」
半分キレ気味に吐き捨てる副社長。

俺はその声を無視して、会議の席に向かった。