氷の美女と冷血王子

「専務が召し上がらないなら、私も食べません」
へ?

「何言ってるの、君は食べなさい」
「いいえ」

いいえって・・・

「それはダメだ」
そんなことで体調を壊されては俺が困る。

「では、専務も何か召し上がってください。ご希望のものがあれば用意しますので」

腕を組み斜め上から睨み付ける彼女は、すごい迫力だ。
整った顔が怒るとこんなに怖いんだな。
それにしても、希望のものねえ。
本当にコンビニ弁当には飽きたんだが・・・
その時、開けられたドアの向こうのデスクの上に置かれた弁当包みが目に入った。

「あれ」
「え?」

指さした俺の視線の先を、彼女も振り返る。

「君の弁当を、もらっていい?」
「はあ?」

うん、あの弁当なら食べてみたい。

「私のお弁当なら食べていただけるんですね」
何度も俺の顔と弁当を見比べた彼女は、諦めたように口を開いた。

「ああ」

「たいしたものは入っていませんよ」
「いいよ」
たとえ夕飯の残りでも、君の弁当なら食べてみたい。

それから、弁当を俺のデスクに運びお茶を入れてくれた。

「ありがとう」
「いいえ。私は何か買ってきますので、先に召し上がってください」
「いいよ、待ってるから買ってきて」
「ダメです。この後会議の予定が入っているんですから、早く食べてください」
半分キレ気味に、お茶を差し出す。

「分かった、食べるから」
これ以上怒らせれば、弁当を取り上げられそうだ。