氷の美女と冷血王子

「おい、口が開いてるぞ」
ニタニタしながら、徹が俺を見ている。

「ああ」
間抜けにも口を開けて彼女に見入ってしまった。

「良かったよ」
ん?
「何が?」
「お前がただの男だってわかってホッとした」
「どういう意味だよ」
ムッとしながら2杯目のビールを開けると、徹は愉快そうに笑っていた。

なんだか徹の術中にはまったようで面白くないが、あほ面をさらしたのは自分自身である以上どうしようもない。

「美人だろ?」
「ああ」

綺麗すぎて現実味がない。
まるで作り物みたいだ。

「知り合いなのか?」
「ああ、高校時代にな」

ふーん。
確かに、1度見たら忘れられないかもしれない。
きっと記憶に残るんだろうな。

「1ヶ月ほど前にたまたま見かけたんだ。元々綺麗な奴だとは思っていたが、正直驚いた。この俺が、なりふり構わず勤め先を調べてしまうくらいに興味を引かれた」
ククク。
バカだろうと笑ってみせる徹。

「らしくはないな」

いつも冷静で、あまり感情を出さない徹にしては珍しい。
もしかして、こいつは彼女が好きなのか?もしそうでも不思議ではないが、

「オイ、誤解するなよ」
「え?」
1人妄想を膨らませている俺を徹が睨んでいる。

誤解、なのか?

「さすがにあそこまで目立つ奴とどうこうなろうなんて思わない。ただ、珍しいものを見つけたから親友のお前に見せたい。そんな感じかな」
「へー」

「驚いただろ?」
「まあな」
目の保養にはなるし、誰かに言いたい気持ちもわかる。


「お客さん、初めてですよね?」
徹と2人話している俺にママが声をかけてきた。
「ええ」
乾き物のつまみに手を伸ばしながら、ママの顔を見る。

うん、美人だ。
年齢的には母さんと同じくらいだろうか、どう見ても親世代ではあるが、綺麗な人に違いはない。
きっと彼女の母親だろう。
目元と輪郭がよく似ている。

「麗子がお目当てですか?」
「え?」
グラスを持つ手が止った。

「いえね、うちに来る初めてのお客さんは、ほとんどが麗子目当てだから」
ふーん。

男はみんな同じってことか。悲しい性だな。
世の中の男を代表して恥ずかしい気分になった。