氷の美女と冷血王子

「麗子、たまには飲まない?」

見ると、母さんはワインのボトルを手にしている。

「飲むの?」
いつも仕事の後は飲まないのに、珍しい。

「たまにはいいじゃない」
すでにグラスを半分ほど空けた母さんが、私にもグラスを差し出した。

まあいいか。
明日は日曜日でお店も休みだし、たまった洗濯と家の掃除以外に用事はない。

「飲むなら、先に店の片付けするよ」
私は流しに残ったグラスを片付け始めた。

「明日でいいじゃない」
不満そうに、それでも店の中のゴミを集めて回る母さん。

母さんは美人だし、人当たりもいいし、とっても優しい。
でも、少しズボラ。
使い終わった食器を残して置いても平気だし、多少のほこりも気にしない。
せっかく休店日前の店で飲むなら、綺麗に掃除が終わってからにしたいって思わないのかしら。
飲んでしまえば面倒くさくなるだけなのに。

「ホント、麗子って良いお嫁さんになるのにねえ」
いつの間にか手を止めていた母さんが、私を見ていた。

「なるのにねえって、残念そうに言わないでよ」
まるで、私が結婚できないみたいじゃない。失礼ね。

「何、あてがあるの?」
「あるわけないでしょ」
じゃなければ、ここで母さんの店の手伝いなんてしていません。

「おかしいわよね。こんなに綺麗で、頭も良くて、家事全般何でもこなすのに、なんで男ができないのかしら」
「フン。放っておいて」
その答えがあるなら、私が一番知りたい。