「孝太郎は、絵を描くの?」

「え?」
思ってもいないことを聞かれ、間抜けにも口を開けたまま麗子を見た。

「見てみたいわ、孝太郎の描いた絵」

真っ直ぐ真剣に俺を見る麗子の視線が、笑っていない。

「一華に聞いたのか?」
「ええ」

ったくあいつ、余計なことを。

「又いつか、時間があったら描いてやるよ」
「本当?」
「ああ」

子供みたいに喜ぶ麗子が、とてもかわいい。

「そんなに描いて欲しければ、嫁に来るか?そうすればすぐにでも描くぞ」

「いや、それは、ちょっと・・・」
ゴモゴモと口ごもる。

麗子が側にいてくれれば、1度は諦めたキャンバスに向かう勇気が出るかもしれない。

「さすがに嫁は無理だけれど、今夜一緒に過ごすことはできるわよ。家に来る?」
少し顔を赤らめて、麗子が誘ってくれた。

今夜うちにって事は、そう言う誘いって事だよな。
なんだか俺まで照れてしまう。

「いいけど、ホテルを取ろうか。さすがにシングルベッドでは狭いから」
「ああ・・・うん」
耳まで真っ赤になりながら、麗子も頷いた。