氷の美女と冷血王子

「実は、私の父は会社を経営しているんです。見えないと思いますが、これでも社長令嬢です」
ちょっと恥ずかしそうに話し始めた一華ちゃん。

「へえー、知らなかった。でも、なんで営業にいるの?」

どう見ても、お嬢様にはかけ離れた部署だと思うけれど。

「父も母も兄も、みんな私が働くことに反対で、大学卒業の時にもめたんです。まともに就職試験を受けさせて、実力を評価してくれないなら、家を出てよその会社に入るって脅したんです」

「ふーん。でも、どうしてそこまでこだわるの?」

あまりちゃんと働いてきていない私にはわからない感覚なのかしら。

「まず、うちの母が世間知らずのお嬢様で、世界は家庭の中だけ。夫と子供命みたいな人なんです。とにかくこだわりが凄くて、食べるものはすべて手作り、買い与える物も一番いいもの。こっちの希望とか無視ですから」

「でも、それだけ家族を大事にしているって事でしょ?」
聞いているだけだといいお母さんだけれど。

「度が過ぎるんです。それで、反面父は仕事が忙しくて子供は放置で、一緒に出かけたこともありません」

「ふーん」
私は父がいないから、それはよくわからない。

「それでも、子供の頃は幸せだと思っていたんです。何不自由なく育ちましたから」

そうだろうな。
やっぱり、お金があって、ご両親がそろっているって幸せなことだもの。