氷の美女と冷血王子

チェーン店の回転寿司で夕食を済ませ、運転手付きの車でやって来た都内の一角。
結構街中なのに、大きな公園に隣接しているせいか緑が多くて静かな場所。
乗ってきた車から降りると、大きなゲートがあり、その先に緑の小道が続いている。

「いつ来ても静かでいいところね」
「そうだな」

ここは、都内にある会員制のクラブ。
大きな洋館を一軒使った作りで、中も広々としていてゆったり落ち着く空間。
高い会費を払ったお金持ちや有名人しか利用できない店だけに、ここでなら誰の目も気にする事なくのんびりできる。

孝太郎と付き合うようになって、私は育った環境の違いに何度も驚かされた。
だからといって、うらやましいと思うわけではない。
お金があって、高級なものを持っていればいいというものではないと思うし、私自身も普段利用する一般的な物の方が好き。
でも、この店だけは別。

ここに来れば本当に落ち着く。
出過ぎないサービスと、ゆったりとした空間は心をリフレッシュしてくれる。

「麗子」

ん?

先を歩いていた孝太郎の携帯が鳴って、画面を見た瞬間顔つきが変わった。

「仕事の電話だ。悪いけれど、先に入っていてくれ」

「はい」
何度か訪れている店だし、迷うこともなく私は返事をした。


店の人の案内に続き、広めのホールへ。
いつもなら孝太郎が席を決めてくれるんだけれど、

さあどこに座ろうかなって思っていたとき、意外な人が目にとまった。

「あれ、麗子さん?」
相手も気づいたようで手を振ってくれる。

一瞬躊躇ったけれど、私は彼女の席に駆け寄った。