お願い、どうか無事でいて。

今このまま彼がいなくなるなんて、酷すぎる。

私と違って、真面目に、ひたむきに、決して横着せずに、ちゃんと仕事をしてきた孝太郎は、これからもっともっと大きな仕事をして、鈴森商事を大きくしてくれるはず。
そう思ったから、私は彼から離れたのに。
私が側にいたら彼の足かせになると思ったから、こんなに苦しい思いをしてまで彼の元から去る決心をしたのに・・・

ウ、ウウウー。
ギュッと唇を結んで我慢していた声が、押さえられない。

ウウウウウー。

ここがタクシーの中でなかったら、大声を上げて泣いていただろう。
でも、今はまだ泣けない。

孝太郎の無事を確認するまでは我慢する。

こんな事で、私は負けない。
私はしぶといんだから。
そして、私以上に孝太郎はしぶとくて、強運の持ち主。
あんなに頑張って、一生懸命生きている孝太郎がいなくなるわけがない。
神様はきっと、助けてくれる。
そうじゃなければ、神も仏もあったものじゃない。

何があっても私は信じる。

孝太郎は大丈夫。
きっと大丈夫。
私が、死なせない。

止めどなく流れ落ちる涙を、もう止めるすべがなかった。

今だけ、ここだけ。病院に行ったら泣き止むから。

神様お願いします、孝太郎を助けてください。