ブーブーブー。

ん?

徹からの着信。
珍しいなこんな時間に。
時々メールが来ることはあっても着信は滅多にないし、ましてや平日の昼間。
もしかして、良くないことでも・・・

鳴り続ける携帯を手に、私は一瞬躊躇った。

怖いな。不安だな。

できることなら出たくない気もする。
でも、わざわざ徹がかけてくるって事は緊急事態かもしれないから、

「もしもし」
恐る恐る通話ボタンを押した。

『麗子か?』

「ええ」

私の携帯にかけたんだから、他に誰が出るって言うのよって、突っ込みを入れたい気持ちをグッとこらえた。

『麗子、落ち着いて聞けよ』

「どうしたの?」

どちらかというと、落ち着いて欲しいのは、徹あなたの方。

「孝太郎がケガをして、病院へ運ばれた」

えっ。

私の頭の中でキーンと耳鳴りのような音がして、目の前が霞んだ。

嘘、ウソだよね。
そんなはずはない。
孝太郎に、何かあるはずなんて、

「麗子・・・しっかりしろ、麗子」
遠くの方で徹の声がする。

「容体は?」
やっとの事で絞り出した言葉は、震えていた。

「重体だ。予断を許さない状態」

「そんな・・・」

イヤだ。
孝太郎がいなくなるなんてありえない。

「搬送先は中央病院だ。とにかく、行け」
それだけ言うと、電話は切れてしまった。

中央病院・・・中央病院
私は呪文のように繰り返しながら、携帯を握りしめて部屋を飛び出した。