氷の美女と冷血王子

「おはようございます」

「ああ、おはよう」

ママの店に行った翌日、俺はいつものように専務室へ挨拶に来た。


「今日の午後からの視察に、私は同行できませんが誰か付けましょうか?」

麗子がいなくなってから専務の専属秘書は不在となり、秘書課の女性達でスケジュール管理と資料の作成などの雑務をこなし、外出や会議はできるだけ俺が同行することにしていた。
しかし今日は、社長の外出と重なって同行できそうにもない。

「いいよ、1人で大丈夫だ」

やっぱり、そう言うと思った。
本当は誰か同行するべき何だが・・・

「心配するな、1人で大丈夫だ。それより、あいつの所に行ったんだろ?」
チラリと、俺の顔を見た孝太郎。

「ああ」
プライベートな話に切り替わったせいか、ついタメ口に戻ってしまった。

「どうだ、変わりないのか?」

「だいぶ細くはなっていたが、元気だった」

「痩せたのか・・・」
肩を落とし天を仰ぐ姿は、心配の表れだ。

そんなに心配なら、自分で会いに行けばいいんだ。
俺が店に行く度に、『どうだった?元気だったか?』と聞くくらいなら、自分の目で確かめる方が早いだろう。

「もう1ヶ月も経つのにまだ体調が悪いんなら、病院へ行った方がいいんじゃないだろうか?もしかしてどこか悪いところでも」

「フッ、違うよ」

あまりにもトンチンカンなことを、当の本人から言われて笑ってしまった。

「じゃあ何だ?」

こいつ、本気で聞いているんだろうか?

「ああー、お前とこの話をすると脱力してくる。座っていいか?」
「ああ」

朝の忙しい時間なのは分かっていて、俺は専務室のソファーに腰を下ろした。