氷の美女と冷血王子

「私はあの日、彼を裏切ったの。だからもう元に戻るつもりはないわ。終わったことなのよ」

「それで、いいのか?」

そんなことで、お前達の気持ちに整理が付くのか?
2人とも致命的に不器用なことは分かっているが、このままで本当に後悔しないんだろうか。

「ええ。実はね、あの後社長と、奥様からも連絡をもらったの」

「社長から?」

「うん。会社のために働いてくれたのに、申し訳ないと頭を下げられたわ」

「そうか」

社長には河野副社長の事は報告したし、孝太郎からも事情を聞いたんだろう。

「だから、もういいの。しばらくここでバイトをして、半年くらいたったら働きに出るわ。もう逃げないって決めたから、もう一度やりたい仕事を探してみる」

そのはっきりした口調から、麗子なりに決心しているんだと感じた。

孝太郎は麗子のことが好きで、だからこそ麗子を傷つけてしまった自分が許せないでいる。
麗子もまた孝太郎のことが好きで、だからこそ自分は孝太郎にふさわしくないと思っている。
端から見ればもどかしくてじれったい2人だが、ここまでこじれた糸を解くのは容易でない。
さあ、どうしたものかな。

「ああ、そうだ」

急に何かを思い出した麗子が、紙包みを持って現れた。

ん?

「悪いけれど、これを返しておいてもらえるかしら?」
「何?」

首をかしげた俺に、紙袋の口を広げてみせる麗子。

えええ?
俺は、出そうになった声を手で押さえた。