氷の美女と冷血王子

「なあ、麗子」

残ったビールを一気に流し込んでから、俺は少し真面目な顔で話しかけた。

「何よ」
不満そうに俺を見る麗子。

「状況は変わったんだ。河野副社長は依願退職の形で会社を去ったし、三島さん達関係者も会社を離れた。もう今回の件に関わった人たちはいないんだ」

「だから?今さら私にどうしろって言うのよ」
その挑戦的な視線は、10代の頃の尖っていた麗子を思い出させる。

「戻ってきて欲しい」

鈴森商事にはお前のスキルが役に立つし、何よりも孝太郎にはお前が必要なんだ。

「その話は何度も断ったはずよ」

「お前は孝太郎を見捨てるのか?」

「え?」
一瞬、麗子の手が止った。

「彼に何かあったの?」
さっきまでの眼力は消え、心配そうに視線が泳いだ。

「元気だよ、とても。でも、それは表面上だ。お前がいなくなってから休む暇もなく仕事をしている。河野副社長が抜けた分忙しくなっているのも事実だが、見ているこっちが不安になるくらい仕事に没頭している」

「大丈夫なの?」

「そのうち倒れるんじゃないかと心配はしているが、言って聞くような奴じゃない」

そのことは、麗子が一番分かっているだろう。

「それはそうだけれど・・・」

「心配なら、お前が戻って止めてくれ」
それが一番いい方法なんだ。

「でも・・・」

やはり、すんなり頷いてはくれないらしい。