花屋の店員として現れた彼女と言い合いになってから、俺の中で彼女の存在は大きくなっていくばかりだった。
なぜこんなに気になるのか自分でもわからないながらも、もう一度会いたい気持ちだけが強くなっていった。

こうなったら、行動あるのみ。
ウダウダと考えたって始まらない。

俺は週末の金曜日に、1人彼女の店に向かった。
もちろん、徹を誘うことも考えた。
2人で行けば間ももてると思う。でも、やめた。
自分自身の気持ちが整理できない今、徹にすべてをさらけ出すことに躊躇いがあった。
もちろん、徹は俺にとって唯一の親友だから、何かあれば相談するのはあいつしかいない。
それはわかっているが・・・

カラン、カラン。

「いらっしゃいませ」
1週間前と同じく、ママが迎えてくれた。

「こんばんわ」
挨拶をしてカウンター席に座ると、
「あら、お客さん」
どうやら顔を覚えていたらしい。

「ビールをお願いします」
「はい」

店内を見回すと、週末と言うこともありテーブル席はほぼ埋まっている。
あ、彼女がいた。

白いブラウスに膝丈のスカートで、常連客らしい人たちと話し込んでいる。
やっぱり、随分イメージが違うな。
ジーンズにエプロン姿で、花を運んでいた人と同じ人物には思えない。


「麗子」
彼女のことをチラチラと見ている俺に気づき、ママが呼んでくれた。

「いらっしゃいませ」
隣の席に座った彼女に、
「こんばんは」
俺も、無難に挨拶を返してみるが、真っ直ぐに見つめられた視線を感じて言葉が止った。

見れば見るだけ綺麗な顔だが、にこやかさはなく客商売にしては無愛想な感じさえする。

しばらくの沈黙の後、
「えっと」「あの・・・」
2人で声がそろってしまった。