「ドケッ」

三島をかばうように俺を見上げる麗子を、俺は睨み付けた。

「どかないわ」
小さいが凜とした声。

「なぜこいつをかばう、お前は誘拐されて、監禁され、酷い目に遭わされたんだぞ」

俺には麗子の考えていることが全くわからない。

「違うわ。私が三島さんを誘ったんだし、自分の意志で三島さんに付いてきたの。ちょっとした行き違いがあったけれど、たいしたケガではないわ」
力なく笑ってみせる麗子。

誘った?付いてきた?行き違い?

「ふざけるな」

麗子、お前は何がしたいんだ。
なぜこんな奴をかばうんだ。

あまりの無力感に、俺はその場に膝をついた。
何のためにここに来たんだ。
寿命が縮むほど心配した俺の気持ちはどうなるんだ。

「とにかく、病院へ行こう。ケガの治療が先だ」
この場にいる誰よりも冷静な徹が、麗子の体を支える。

三島と男達も連行され、麗子も徹に連れられていった。
ただ俺だけが、放心状態のまま取り残された。