氷の美女と冷血王子

「孝太郎、待て。落ち着け」

突然走り出した俺の背に徹の声がかけられたが、無視した。

もう、止る気はない。
とにかく麗子を助けたいんだ。


3台止っていたダンプの1台にキーが付いていた。
もちろん俺は大型車の免許は持っていないし、運転したこともない。
しかし、躊躇いはなかった。

ブウウゥーン。
エンジンが回転を上げ、ダンプが動き出す。

俺は倉庫の入り口に向けて、ハンドルを切った。

ドンッ。
ガチャーン。
ガガガッ。
ガッシャーン。

耳をつんざくような音と、強い衝撃。
俺の体も、ハンドルと座席に2度ほど打ち付けられた。

「麗子ー」

胸と、背中と、首と、頭と、手と足。体中が痛いけれど、それでも麗子の側に行きたくて、俺は駆け出した。


.「孝太郎」

三島と2人の男が放心状態で立ち尽くす足元で、横たわっていた麗子が俺の名を呼んだ。

「麗子、麗子」

俺が駆け寄るのと、ダンプが破壊し突入した入り口から複数の足音が聞こえてきたのが同時だった。