車を飛ばし、戻ってきたマンション。
スペアキーで中に入ると、整然とした室内になぜかホッとした。

「ここは無事だな」
「ああ」
数時間前に見たままだ。

「そのパソコン、麗子のか?」
「そうだ」

そのパソコンを使ってずっと河野副社長について調べていた。

「ちょっと見せてくれ」
「ああ」


カチカチと徹がパソコンを操作している横で、俺は山になった書類を1枚ずつ確認していく。

どれもこれも河野副社長がらみで、調べたものをプリントアウトしたようだ。
東西銀行との融資の書類や、企業間の企画書、見積書、出入金記録。
どれも一般人に入手できるものではない。

「随分危ないことに手を出していたみたいだな」
機嫌の悪そうな徹の声。

「そうだな。ったく、あれだけ止めたのに」
結局俺の言う事なんて聞く気がなかったらしい。

「すべてお前のためだろ」
「・・・」

そんなこと、俺は望んでいない。
こんな危険を犯してまで働いてくれなんて一言も言っていないし、思ってもいない。
それなのに・・・

「まあ怒るな。あいつなりに一生懸命だったんだから」
「しかし」
そのために麗子が危ない目にあったんじゃ、何の意味もない。

「今は麗子の無事を確認することが先決だ。もめるのはそれからにしろ」
「ああ」
確かに、その通りだ。