「オイッ、しっかりしろ」
気合いを入れるように背中をペシッと叩かれ、ハッとした。

「悪い、動揺してしまった」

「しかたない、この状況だ。とにかく、今起きていることを整理しよう」
「ああ」

こんな時、徹は本当に役に立つ。
俺も相当に厚い皮を被って生きているつもりだが、徹の方が上かもしれないと時々思う。

「この部屋は確かに荒らされてはいるが、争った様子はない。そう言えば、麗子はここにいなかったんだよな?」

「ああ。ばあさんが管理する都心のマンションにいた」
「そうか」

じゃあ、犯人は麗子を連れ去るためにここに押し入ったんじゃないって事か。
となると、何かを探して、

「孝太郎、麗子が隠れていたマンションの方へ案内してくれ」
「あ、ああ」

冷静になって考えれば、何か物を探しに入ったにしてはここは荒らされすぎている。
ここまでするのは、きっと探している物が見つからなかったって事だ。
であれば、麗子はまだ無事でいるかもしれない。

「徹、急ごう」
「ああ」