「どうだ、口を割ったか?」

聞こえてきた声にビクンと反応してしまった。

この声は、河野副社長。
やっぱりあの人が黒幕なんだ。

「まだです。今気がついたところでして」
「三島、何をモタモタしているんだ。時間がないんだよ。この女が手に入れた情報だけでも十分危険なんだ。もし社長の耳にでも入って計画がバレれば俺たちはおしまいだぞ」
「はい、分かっています」
「分かっているなら早く吐かせろっ」

こういうのを恫喝って言うのよね。
権力にものを言わせて力でねじ伏せるなんて、本当に最低。
その上、河野副社長は命令するだけしてすぐにこの場を立ち去っていった。

残されたのは、三島さんとチンピラ風の2人の男だけ。

「青井さん、君が使っていたパソコンと調べていたデータはどこにありますか?」
「え?」

パソコン?データ?.

「あなたが河野副社長について調べていたのは分かっているんです。それをこちらに渡してください。でなければ、」
そこまで言って、三島さんの言葉が止った。

「そうでなければ何だって言うんですか?」
こんな時にまで意地を張る自分がイヤになる。

「自宅マンションはすでに調べました。どこに隠したんですか?」

えぇ、マンションはすでに調べたって・・・それって・・・

「俺たちも、人生かけているんです。いい加減言ってください。じゃないと、命の保証はできない」

キーンと頭の中で耳鳴りがした。
殴られるよりも蹴られるよりも衝撃的だった。

「パソコンとデータはどこにある?」

自分のやっていることを軽く考えたつもりはない。
危険だって感じていたし、法に触れる自覚もあった。
でも、命に関わることとは思っていなかった。

「できることなら、あなたをこれ以上傷つけたくはない」
「三島さん」

何が正しくて、誰が悪いのか、正直わからなくなった。
私はただ孝太郎のためになればと思っただけで、それなのに・・・
少しだけ、心が揺れた。
三島さんも河野副社長の被害者に見えた。でも、

その時、
バンッ。
大きな音がして、建物が揺れた。