氷の美女と冷血王子

店を出て、タクシーに乗り、向かったのは都内のホテル。

慣れた手つきでチェックインを済ませた三島さんに手を引かれ、私は客室へと入った。


もしかしてすぐにベットへ連れて行かれるのかと思ったけれど、まずはソファーに座り冷蔵庫から出したアルコールをグラスに注いでくれた。

「急ぐことはない。まあ飲みましょう」

緊張で喉が渇いていた私もグラスに口を付けた。

しかし、この状況で会話が続くはずもなく、しばらく沈黙のまま時間だけが過ぎる。

たまりかねた私は自分から話を切り出した。

「河野副社長の目的は何ですか?」

「え?」
少し驚いたように、三島さんの手が止った。

「何の目的で、危険を冒してまで裏金を作ろうとするんですか?」
「青井さん、あなたは・・・」

私は決して河野副社長のやっていることの全容をつかんだわけではない。
証拠だって何もないし、ほとんどは私の憶測。
でも、状況証拠を整理し組みたてて行くと、鈴森商事に入るべき利益を削って裏金を作っているんじゃないかって結論にたどり着いた。

「話してくれる約束ですよね?」
だから、私はここへ来たんだ。

「やはりあなたはすごい人ですね。専務が秘書にと望むだけのことはある」
「三島さん?」

「もう少し早くあなたに出会いたかった。そうすれば、僕の人生も変わっていたかもしれない」

この人、何を言っているの?
それに、なんだかフワフワして、気分が・・・
あぁ。
自分の体が、ソファーに倒れていくのがわかった。

「青井さん、しっかりして。.青井さん」
遠くの方で、三島さんの声とドアの開く音。

私はそのまま意識を失った。