「はい。これでいいと思います。一応修復はしましたが、パソコンで作った書類は一旦アクセス許可のあるUSBに落として、社内のシステムにアクセスし直してくださいね。無茶をすると、またデータが消えますよ」
ちょっと脅し気味に話す声に、
「はい」
うなだれる秘書。
あれ、この人。
Tシャツに、ジーンズに緑のエプロン。
後ろ姿しか見えないが、絶対に秘書課の人間ではない。と言うか、うちの社員ですらないと思う。
それに・・・
「ああ、専務」
やっと存在に気づいたらしい秘書が、俺を振り返った。
「お取り込みのようだね」
つい嫌みを言ってしまった。
「申し訳ありません」
頭を下げる秘書。
だからといって、俺の表情が緩むことはない。
そもそも、重要な書類を扱うことが多い秘書課で、不注意からデータを消しそうになるなんてあってはならないことだ。
上司として、一言も二言も文句を言ってやりたい。
しかし、今の俺にはそれ以上に気になることがある。
「ところで、君は?」
俺は、秘書の先にいたエプロン姿の女性に視線を向けた。
「専務、違うんです。この方は私が無理にお願いして」
ちょっと声を震わせながら、言い訳をする秘書。
「違う。僕はこの方がどなたなのかを聞いているんだ」
仕事をしているときの俺はいつも以上に感情が表に出ない。
聞く人によっては冷たく聞こえることがあるようで、『怖い』と言われることも少なくはない。
きっと、今の俺も冷血のオーラを出していることだろう。
ちょっと脅し気味に話す声に、
「はい」
うなだれる秘書。
あれ、この人。
Tシャツに、ジーンズに緑のエプロン。
後ろ姿しか見えないが、絶対に秘書課の人間ではない。と言うか、うちの社員ですらないと思う。
それに・・・
「ああ、専務」
やっと存在に気づいたらしい秘書が、俺を振り返った。
「お取り込みのようだね」
つい嫌みを言ってしまった。
「申し訳ありません」
頭を下げる秘書。
だからといって、俺の表情が緩むことはない。
そもそも、重要な書類を扱うことが多い秘書課で、不注意からデータを消しそうになるなんてあってはならないことだ。
上司として、一言も二言も文句を言ってやりたい。
しかし、今の俺にはそれ以上に気になることがある。
「ところで、君は?」
俺は、秘書の先にいたエプロン姿の女性に視線を向けた。
「専務、違うんです。この方は私が無理にお願いして」
ちょっと声を震わせながら、言い訳をする秘書。
「違う。僕はこの方がどなたなのかを聞いているんだ」
仕事をしているときの俺はいつも以上に感情が表に出ない。
聞く人によっては冷たく聞こえることがあるようで、『怖い』と言われることも少なくはない。
きっと、今の俺も冷血のオーラを出していることだろう。