氷の美女と冷血王子

「そう言えば、青井さんって辞めたんじゃないの?」

俺と一華の会話に麗子の名前が出てきたのを聞いて、母さんが口を挟んできた。

「香山からは、休職の届けが出ていると聞いているが?」
すでに、父さんの耳にも入っているらしい。

「長期休暇だよ」
俺がそう報告したんだ。

母さんが辞めさせたがっているのは知っているが、俺は諦める気はない。
俺の秘書は麗子以外考えられないんだ。

「良いじゃない。麗子さんのこと、私は好きよ」

「え?」
俺は驚いて一華の方を振り向いた。

「だって、すごく綺麗だし、その上仕事もできるんでしょ?」

「まあな」
間違いなく優秀な秘書だ。

「素敵じゃない。あれだけ目立つ人だから色々言う人はいるかもしれないけれど、大半は単なる噂でしょ。私は、何を言われても堂々としている麗子さんのことをカッコイイと思うわ」

ふーん。
一華がこんな事言うなんて、意外だな。

「私は反対ですからね。青井さんの事好きにななれないわ」
それだけ言うと、空いた食器と共に母さんは台所に消えていた。

はあー、やっぱり麗子が逃出した原因は母さんか。