氷の美女と冷血王子

家に帰ると、母さんがうれしそうに出迎えてくれた。

「お帰りなさい、孝太郎」
「ただいま」

テーブルにはすでに旨そうな夕食が並んでいる。
きっと時間をかけて準備をしてくれたんだろうな。

「お帰り、お兄ちゃん」

妹の一華もすでに帰っていたらしい。

「ただいま。そう言えばお前、」

今日の会議で、「営業の鈴木と高田が商談をすっぽかして契約が延期になったらしい」って聞いたことを思い出して声を上げた。

「なによ」
一華の不満そうな顔。

「いい加減仕事を辞めたらどうだ?」

一華のことを無能と言うつもりはない。
女性としてはガッツもあるし、努力家の良い社員だと思う。
しかし、自分の妹となれば見方も変わってくる。
できれば早いうちに結婚して幸せになって欲しい。それが本心だ。

「お兄ちゃんも母さんもいつもそればっかり。何で私のことを認めてくれないの?女だから?それじゃあ、お兄ちゃんの秘書の青井さんはどうなるのよ、麗子さんにも仕事を辞めて結婚しろって勧めるの?」
よほど興奮しているのか、随分突飛なことを言う。

「今はお前の話をしているんだ。彼女は関係ないだろう。それに、いつからそんなに親しくなったんだよ」

会社の中で、一華が名前で呼び合うほど親しい女性は今までいなかった。
珍しいな。

「ほら、2人ともそんなところで言い合っていないで、食事にしましょう。せっかく作ったのに、冷めちゃうわ」

母さんの一言で夕食が始まった。