氷の美女と冷血王子

専務室から続く廊下を通り、秘書課のドアを開ける。

「ねえ、悪いけれど、」
と言いかけて言葉が止ってしまった。

そこにいたのは秘書課の女性達。
何人かはランチに出かけているようで、今は3人が残っていた。
徹を含め役員専属の秘書達はここで勤務していないし、普段からここにいるのは5人ほどだから特別不思議な光景ではない。
ただ・・・
3人のうち1人は自分のデスクにランチを広げ、もう1人はカチカチとパソコンを操作している。
それも、かなり必死の形相。何かあったんだなって思わせる顔つきだ。

「どうしたの?」
近くの席でちょうどお弁当を広げていた子に声を掛けてみた。
「間違えて、データを消してしまったようです」
へー。

でも、それなら
「システムを呼べば?」
うちにだってシステム担当は常駐しているから呼べば来てくれるだろう。

「会社用ではなくて、個人のパソコンなんです。家で書類を作ってきてデータを落とそうとしたら消えたらしくて」
「フーン」
うちの会社だってセキュリティーはかかっているわけだから、むやみには外部アクセスできないようになっている。個人用のパソコンにデータを落とそうなんてするからおかしくなるんだ。

自分でもわかる冷たい視線で、真っ青になっている秘書を見た。