「そう言えば、麗子が河野副社長と東西銀行について調べているんだが」

今朝も、その件で徹に聞きたいことがあると言っていた。

「孝太郎、それは・・・」
徹の顔色が変わる。

「何だ?何かあるのか?」

「ああ」
チラチラと辺りを見回し、徹が声を潜めた。

どうも様子がおかしい。

「徹?」

「どうやら、不正が行われている可能性があるんだ」

「不正?」

「そうだ。それがいつどんな方法なのかはまだ調べがついていないが、東西銀行からの融資がやたらと増えているのも気になっているし、その資金を使って河野副社長が進めている事業にも怪しい点が多い。どうやら帳簿の操作をしているんじゃないかと思うんだ」

「帳簿の操作?そんな・・・うちの会計監査はどうなっているんだ?」

街の個人商店じゃあるまいし、そう簡単にできるはずがないだろう。

「ここ数年で河野副社長がすすめた新規の事業は、相手企業との交渉から資金の調達まですべて自分で準備していた。完全に河野副社長の1人仕事であれば、第三者の目は届きにくい」

「しかし、」

「もちろん監査は通常通り行われているし、俺も確認したが一見怪しいところはない。しかし、あの人はこの道のプロだ。何か抜け道があるんじゃないかと、俺も気になっていたんだ」

嘘だろ。
いくら何でもそんな事まで・・・

「とにかく、注意した方がいい。麗子が突っ走ると危ないぞ」

「そうだな」

気をつけた方が良さそうだ。