氷の美女と冷血王子

「倒れたの?」
沈黙に絶えかねた麗子が口を開いた。

「ああ」

「過労?」
「いや、ストレス、かな」

「それって、私のせい?」
「かもな」

今さら言いつくろってもしようがないと、正直に答えた。

「運転して来たのか?」
「ええ。母さんがキーを預かっていたらしくて」

「免許を持っていたんだな」
知らなかった。

「バイクでもトラックでも何でも乗るわよ。こう見えて大型免許も持っているの」
「へえー」
まだまだ俺の知らない麗子がいるらしい。

考えてみれば、出会ったときから麗子は意外性の塊だった。
いつも俺の想像の斜め上を行く。
一緒にいて飽きないと言えば聞こえがいいが、当事者となればヒヤヒヤさせられるばかりで腹が立つことも多い。
本当にやっかいな存在だ。

「で、俺がいくら連絡しても返事さえよこさないお前は、徹に言われてのこのこやって来たのか?」
会えてうれしいくせに、ついイジワルな口調になった。

「だって、孝太郎が倒れたって聞いたから」
口をへの字にして拗ねてみせる麗子。

「その原因が自分だって思わないのか?」
「だって・・・」

ピッシッ。
「痛っ」

「言い訳するな」
デコピンされたおでこに手を当てる麗子を睨み付けた。

あれだけ会いたかった麗子が目の前にいる。それだけでうれしいのに、口から出てくるのは意地悪い言葉。
俺は小学生かっ。

「ごめん。でも、孝太郎が無事で良かった」
フッと、麗子の表情が崩れていく。

「バーカ」

小刻みに震える肩に手を回し、俺はギュッと抱き寄せた。