「どうする?家に帰るか?」
運転席から前を見ながら、こちらを振り返ることもなく話す徹。

さあ、どうするかな。
麗子を探さなくては前には進めない。
しかし、事はそう単純でない気もする。
まずは麗子の気持ちを知りたいが・・・

「とりあえず会社に向かってくれ。後は自分の車で出るから」
「わかった」

今回の件の当事者は俺と麗子だ。
待っていろと言ったのに逃出したのは麗子だし、そうさせてしまったのは俺。
でもこのまま一緒にいると、徹に八つ当たりをしてしまいそうだ。



会社に戻ると、デスクの上に辞表が置かれていた。
一緒にあった便せんに、『短い間でしたがお世話になりました』たった一言残された言葉。
それを見た瞬間、俺たちの関係はこんな言葉だけで終わるような物だったのかと憤りさえ感じた。

ブー、ブー、ブー。
まずは麗子の携帯へ電話をかけてみる。

・・・。
やっぱり繋がらないか。

『さっき日本に帰ってきた。まずは会って話そう。連絡をくれ』
完結に短いメッセージを打った。

数分後、既読にはなったが返事はこない。

これは、俺と話したくないってことだろうか?
それとも、具合が悪くてメールも打てないとか?
もしかして、誰か他の奴と一緒にいるのか?
らしくもなく、妄想を膨らませてしまった。

マズいな、俺は相当いかれている。