久しぶりに飲みに出て、本当に楽しかった。
すっかり仲良くなった私達は『一華ちゃん』『麗子さん』と呼び合うことになった。

ビールを一杯で止められソフトドリンクになってからも一華ちゃんはハイテンションに話し続けていて、『うちの部長ってサイテーなんですよ』『麗子さん、今度部長のコーヒーに毒を仕込んでください』なんて半分笑えないようなことを大きな声で言い続けた。

しかし、
「オイ、いい加減にしとけよ」
時々髙田君が注意すると、一瞬だまる一華ちゃん。

この2人付き合っているんだろうかと何度も思ったけれど、どうやら違うらしい。
どんなに打ち解けても距離感は同僚だし、2人からは全く色気を感じない。
純粋に仲のいい同期なんだろうと感じた。



「ハアー、うらやましいな」
マンションに帰っても同じ言葉が口を出る。

私にもあんな仲間が欲しかった。

ブーブーブー。
メールの受信。

孝太郎かなって思ったら、徹から。

『オイ、いつまで逃げてる気だ?孝太郎、今夜も飛行機で帰ってくるぞ』

え?
予定では明日の夜のはずなのに。

『お前と連絡が取れないことで仕事にならなくなったんだと。予定を1日切り上げて帰って来るらしい』

そんんなことして、仕事は大丈夫だろうか?

『それでも、予定は1日前倒しでこなすんだから、さすがだよな』

ホッ。
確かに、孝太郎らしい。仕事の鬼だものね。

『なあ麗子。いくら優秀な人間でも、1人の人間ができることには限界があるんだよ。何かを優先すれば、何か犠牲を払うことになる。今回の事で、孝太郎は日本に一刻でも早く帰ってきたいと望んだ。だからと言って仕事を犠牲にするような奴じゃないから、きっと自分の時間を犠牲にしたんだと思う。この意味がわかるか?』

それは・・・
おそらく、睡眠時間を削って食事もせずにスケジュールをこなしたんだ。

『これが、お前の望むことなのか?』

送信されてくる徹の言葉に、私は一言の返信もできなかった。

そうじゃない。私はこんな事望んではいない。
でも、他に方法がないじゃない。