氷の美女と冷血王子

「で、早百合ちゃんはいくつになったの?」
上品な婦人は山田さんと知り合いだったようで、にこやかに話しかけている。

「もう25ですわ。おばさま」
山田さんの方も笑顔で答える。

「あら、そろそろ結婚してもいい年頃ね」

「ヤダ、おばさまったら」

楽しそうな山田さんと婦人の会話を聞きながら、この場にいる自分に対する違和感が膨らむ。

私はなぜ、ここにいるんだろう?

「青井さん、仕事の方は慣れたかね?」
食事の手を止め、意味ありげに私を見る河野副社長。

フン。
私の仕事を邪魔しているのは、あなたじゃないの。

私は返事をせずに、見つめ返した。

「専務は君のことを随分気に入っておられるようだね」
「・・・」

嫌みな言い方。
河野副社長は、きっとそのことが気に入らないのよね。

「でなきゃ、君のために私に頭を下げたりはしないだろう?」

「「えっ」」
私と婦人の声が重なった。

河野副社長は、私を試している。
公にできないとはいえ、秘密を知っている私を牽制したいんだと思う。
実際、あのプライドの高い専務が、頭を下げたなんて信じられないし。

「ねえ、あなた」
1人考え込んでいた私は、急に呼ばれて顔を上げた。

「あなた、青井さんとおっしゃるのね?」
「はい」

婦人がジッと私を見ている。
なんだか、冷たい視線。
どうやら、私はこの人にも嫌われているらしい。