氷の美女と冷血王子

「河野副社長が、私の不正アクセスの件を持ち出したんでしょ?」
シャワーを浴び、バスローブ姿でベットに腰掛けながらやっと口にした。

「ああ、そうだ」
「私のせいで、専務が」
「オイッ」
ギロッと睨まれた。

そう言えば、ホテルに向かう車の中で、仕事を離れたら「専務」と呼ぶなと言われたんだった。

「ごめん。でもね、私のせいで孝太郎に迷惑をかけたくないの」
「分かっている。でも、誰がなんと言おうと俺はお前を手放す気はない」
「孝太郎」

不覚にも、涙がこぼれそうになった。
でも、泣かない。
どんなことががあっても私が孝太郎を守る。

自分を失ってもいいと思えるほど、人を愛したことはなかった。
この人のためになら、何でもできると思える人に初めて出会った。
髪の毛1本までもが愛おしくて、孝太郎を思うだけで胸が苦しい。

その夜、私達は感情のままに求め合った。
初めての時には痛みの方が強かったけれど、今夜は違う。
その温もりも、匂いも、感覚も、すべてが幸せを実感させてくれた。



「孝太郎」

「ん?」
まだ眠そうに返事をする孝太郎。

「明日から5日間の予定で香港出張よね?」
「ああ。もう日付が変わったから今日な」

そうか、しばらくお別れなのね。

「河野副社長のことは俺が話を付けるから、何もするな。何を言われても気にするな。いいな?」
「うん」

「まだ早いからもう少し寝ていろ」と布団を掛けられ、私はもう一度抱きしめられた。