氷の美女と冷血王子

「おはようございます」
「あぁ、おはよう」

彼女と顔を合わせたのは週明けの月曜日。
5日ぶりの事だった。

「ずいぶん心配をかけたね」

きっと彼女も心配をしていてくれたことだろうと、できるだけ明るく声をかけた。
しかし、彼女の反応は意外なものだった。


「専務、これを見ていただきたいんです」

いつもなら朝1番でコーヒーを運んできてくれるのに、今日は両手に書類を持ってデスクの前に立っていた。

「何?」
渡された書類に目を落とす。

え、ええ?
一瞬声を出しそうになった。

目の前に広げられたのは河野社長の個人口座の出入金や、ここ1ヶ月ほどの行動の記録。
いつどこで誰に会っていたかまで、詳細に記録されている。
それに、何枚かめくったところから出てきたのは、同じく川崎紙業の大津孝取締役の調査結果。

嘘だろ。
俺だって今回の騒動で内部事情をリークしたのが大津取締役なのは知っている。
しかしそれは、川崎社長から聞かされたからだ。
彼女が知るはずもないことなのに・・・

「これ、どうしたんだ?」
自分でもわかるくらい強ばった声を出していた。

「調べたんです」
「自分で?」
「ええ」

この状況を全く理解していない彼女は、うれしそうな顔をして見せる。

これは、完全な個人情報だ。
これだけの情報を得るためには、俺のように人海戦術で攻めるか、もしくは非合法な手段で手に入れるしかない。
きっと、彼女がとった行動は後者だ。

「こんなことをして、俺が喜ぶとでも思ったのか?」
完全に感情の消えた顔で、俺は彼女を見つめた。

「専務?」
ポカンと、見つめ返す彼女。

こいつは、本当に分かってないらしい。