自分でやっておいて言うのも変だけれど、今は怖い時代だと思う。

その気になれば、写真一枚から色々なことが分かってしまう。
いつ誰とそこに行ったのか。
何を食べどれくらい滞在したのか。
完全にプライベートでしかない情報も調べられてしまう。

私も1時間ほどパソコンに向かっていただけで、河野副社長と大津取締役が知り合いだという確証はつかんだ。
しかし、欲しいのはもっと深い情報。
二人がこれから何をしようとしているのかが知りたい。


「さあ、やりますか」
ポキポキと首を鳴らし、1度大きく伸びをした。

これから先は少し危ない橋を渡ることになる。
違法行為どころか犯罪レベルで、見つかれば捕まってしまうかもしれない。
それでも、今の私に迷いはなかった。

まずは、大津取締役の身辺調査と個人口座の流れ。
もちろん、銀行のメインコンピュータなんて簡単にはアクセスできないけれど、やるしかない。
あとは・・・
河野社長の口座も調べてみて、記事の掲載を予定している出版社の方も調べてみよう。
誰が情報提供したのかがわかれば、解決の糸口も見つかるはずだから。

はじめは躊躇いながら始めた私も、やっていくうちに恐怖心は消えていった。

出てくる証拠も河野副社長にとって不利なものばかりで、「これで専務を助けられる」そう思うと、もっともっとと欲が出てしまった。

自分が今どれだけ危ないことをしているのか、私は忘れていた。