氷の美女と冷血王子

こう見えて、私はコンピューターに関してはプロ。
もちろん大学で勉強しただけで実務経験はないけれど、それなりの知識や技術は持っているつもり。

中学時代から家の中で過ごすことが多く、ずっとパソコンに向かっていた。
その頃の私は精神的に不安定で、パソコンの中から少しでも多くの情報を得ることに夢中だった。
要するに、ハッキングまがいのことに手を出していた。
今思えば、バカなことをしていたと思う。
でも、子供だった私は相手の気持ちになるなんてことは考えられなかった。


ピコン。
専務からのメール。

『何もしなくていいからな。ただ留守番だけ頼む』
『はい』

『これから相手の社長に会って、対応を錬るつもりだ。遅くなると思うから直帰する。君も、定時になったら上がってくれ』
『はい。専務も無理しないでください』
『ああ』

無理をするなと言ったところで聞いてはくれないだろう。
今はそんな場合ではないんだから。
その思いは私も同じ。
このまま黙って引き下がるつもりはない。


仕事用のパソコンで大体のデータを集めてから、私は自分のパソコンを広げた。

まずは今回の騒動の相手である取引先について調べてみる。

川崎紙業株式会社。
創業は10年前で、段ボールなどの紙を使ったパッケージデザインを手がける会社。
社長は川崎卓(かわさきすぐる)、40歳。
大学を卒業後商社に勤め、10年前に脱サラして仲間と会社を興した。
この社長がちょっと異色の経歴で、元々は造形作家希望で美大に通っていたらしい。
大学時代には何度もコンテストに出品していたようだけれど、一度も入選することなく大学を卒業。
卒業と同時に、夢を諦めてサラリーマンとなった。
そんな川崎社長が大学時代の仲間5人と興したのが今の会社。
デザイン性と機能性を兼ね備えた商品が評価され、今では従業員1000人、海外を含む5つの工場を抱える企業となった。

ふーん、確かにすごい人ね。

しかし、これは表の情報。
少し潜って調べてみると・・・