でも、だからといって現実世界が充実してないなんて事は全然無くて。
むしろその逆。


オタクやってて良かったなって思う事はたくさんあるけど



まず一つ

どんなに現実で嫌なことがあっても
推しの顔を拝んだら大抵のことはチャラにできる。



そして二つ

推しのグループが新曲出すってメール来ただけで、それかコンサートの当選結果出たってだけでも
その日一日が薔薇色に染まって些細なことではイライラしないで済む。



何より


推しは酸素だ。
私が生きる上で欠かせないもの。





















「はぁ、今日もイケメン…」



「はよ、また見てんの。完全なるオタクだねぇ葉月ちゃんは」




「そうだよ悪いか」

朝からグッズのビジュが公開されたって事で登校してすぐスマホの画面を見つめてはニヤニヤが抑えきれない



あぁ、今そこら辺の彼氏といちゃついてる女子より私の方がよっぽど幸福度数高いもん絶対












「あ、にっしーおはよ」



「おう」



ふと隣の席に人が来たので
渋々スマホから目をそちらに移す



「西おはよ」



西 航介。


うわ、名前からもう平凡。(失礼)

そしてこの人
何やらせても平凡な結果に終わるタイプ。

勉強も中の上くらいだし運動神経も別にパッとしないし、まぁ出来ないわけではないくらい。

顔も全然イケメンとかではないけどブサイクではないし、まぁ本当一言でいえば平凡。








「何その顔」


「え?」



「なんかすごい嫌そうな顔されたんだけど」

俺、普通に登校しただけじゃね

って彼は至極真っ当な意見。





私が平凡について語るときほど顔の険しさひどい時ないもんね、知らんけど。




「ごめんごめん、何でもない」


まぁここはテキトーにあしらっといて


はい!

朝のホームルームまでまだ時間あるから
たっぷり推しとの愛を育むとするか…






「何それ」


………………は







隣に座った平凡男の声




私はせっかくの推しとの時間を邪魔されたことによる怒りで


ぐるっと横を向いてそいつを睨みつけた、それはもうスナイパーの如く。




すると相手も怯んだようで

「そんな睨むなよ、ただ聞いただけじゃん…」

力ない声で尻つぼみしたので

私は何も言わずまたスマホと顔を向き合わせた。