母親に連れられ、慣れない大きな建物へ入り、広い廊下を歩いていく。


広い廊下と設備が整ったこの場所は、更に怖さを倍増させるものだ。


エレベーターへ乗り、着いた先には子供がたくさんいた。


扉の上には"小児科"と記された文字と、可愛らしいライオンの写真が貼ってある。


「上野さん、どうぞ」


待つこともなく、すぐに名前を呼ばれて診察室へ入ると、白い服を着た眼鏡の女の人が私を笑顔で見つめていた。


「こんにちは〜」


優しげな表情でそう言うが、私は警戒心を緩めることなく母親の服の袖を強く掴んで離さなかった。


「今日はちょっと娘のことで相談がありまして」


母は私を膝の上に抱き抱え、私が知らない難しい話をたくさん話し始める。


その時、具体的に何を言われたか、はっきりと覚えていない。


ただ、最初は笑顔だったお姉さんが、母の話を聞くたびに険しい顔になっていったのは知っている。


私の顔を時々見ながら。