薄らを目を開けると、天井には見慣れない光景があった。
腕には点滴が打たれ、口には薄緑色の酸素マスクがあてられていた。
息を吐くと、自分の白い息がマスクにかかっているのが目に見える。
「上野さん、分かりますか?」
声をかけてきたのは、白い看護服を着た若い女の人だったから、ここは病院なのだと気づく。
私はそっと、首を縦に動かした。
「もうすぐ、お母さんが来ますから」
そう言われ、看護師さんは部屋を出て行く。
静かな部屋に取り残された私は、窓の景色を眺めた。
そういえば、今日の出来事を全く覚えていない。
日記に書いたかどうかも、忘れてしまった。
何故か、一気に体の力が抜けたような感覚になる。
「…私、なにしてるの?」
自分がここにいる理由も分からず、自問自答をしてみるが、当然返事は返ってこない。
変だな。