旅行から戻ってきた次の日。


綺麗に忘れた昨日の記憶は、日記をみてあらかたを把握する。


"先輩と夕日を見た"


一行、そう書かれていた文字を見て、私は首を傾げた。


何故なら、肝心の先輩の名前が書かれていないからだ。


書き忘れていたとしたら、随分と記憶が緩んでいたものだな。


全く、私はそそっかしい。


一体どの先輩だったのか。


この一つだけの出来事を知ることは出来なかった。


旅行の余韻に浸ることもできないまま、早くも夏休みが終わりを迎えた。


そしてあっという間に2学期が始まった。


2学期の近くの行事といえば、文化祭がある。


私達生徒会は、本番の文化祭に向けて着々と企画案から準備を進めていた。


「今年の文化祭の生徒会企画、恒例のカラオケ大会は入れようと思う」


「モザイクアートとか、飾るアート系も定番じゃない?」


「いいね。他にはどうかな?」


白いホワイトボードには、みんなが言った企画案が徐々に書かれていく。


先輩はメモ帳に文字を書くように、さらさらとマジックを持っている手を動かしていた。


「展示作品も良いと思いますけど、生徒会で模擬店を出店するのはどうですか?」


「みんなが喜ぶものを作れたらいいなって…思ってます」


私はそっと手を挙げて、周りの様子を伺うように顔を左右に動かす。


それいいじゃん!と早速賛成してくれた藍来さん。


それに続けて他の先輩も、私の意見に快く賛成してくれた。


「生徒会で模擬店出すのは今年初だよ!晴香ちゃん、いい提案ありがとう!」


日高さんは、私に笑顔を見せた。


それはキラキラした爽やかな笑顔だった。


こっちがドキドキしてしまうくらいに。