桜が美しく咲く季節が、今年もやってきた。


町は一面淡いピンク色に染まり、外を歩けば心地良い風が肌を撫でる。


暖かく吹く風は、春の訪れを感じさせてくれる。


雲一つない青空の下。

眩しい太陽に照らされながら、僕は古びた石段を登っていた。


小さな雑草が左右に広がり、一面は緑に染まっている。


行きつく先は、人気がない静かな場所。


そして辿り着いた一基の墓を前に、僕はしゃがみこんだ。


上野晴香と名前が彫られている。


彼女は、僕が高校生の時に出会った女の子。


色白で、今にも消えそうなぐらい儚い様子で。


僕にとって特別な存在だった。


今日は彼女の七回忌。


新鮮な水に取り換え、彼女が好きだったカスミソウの花を供える。


「もう7年も経ったんだね。大丈夫、みんな元気だよ」


返事が返ってこないことはもちろん分かっている。


それでも、僕は懐かしい話をしながら語りかけた。


だって久しぶりに会えたのだから。少しくらいいいかな。


「今は3月なのに、なんだか今日は暑いね」


出会ったあの日も、特別暑い日だった。


それは今でも鮮明に覚えている。


これは君と僕らが作り上げた、新しい思い出の物語__