嫌なことがあった時、
悲しいことがあった時、
いつも、私はレモネードを飲む。

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❁⃘向 日葵(むかい ひなた)と乾 湊(いぬい みなと)は生まれた時からずっと一緒。

❁⃘日葵には向 拓郎(むかい たくろう)という2歳年上の兄がいる。

❁⃘湊にも2歳年上の乾 颯(いぬい そう)という兄がいる。

❁⃘拓郎と颯は仲がいい。

❁⃘日葵は女子だが生まれた時から男子に囲まれているので、女子より男子と話す方が楽。

❁⃘向家の両親は有名な物理学者で拓郎が中学生のときからアメリカに滞在している。

❁⃘拓郎は風ノ谷(かぜのたに)中学校、颯は鳥音(とりね)中学校に入っている。

❁⃘日葵と湊は中学受験生。

❁⃘物語の始まりは
日葵➯➱➩小学6年生
湊➯➱➩小学6年生
拓郎➯➱➩中学2年生
颯➯➱➩中学2年生

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日葵side

ピンポーン。

家のチャイムがなる。

颯くんか湊かなー、そう思いながらドアを開ける。

颯「今日夏祭りだから一緒に行こ。」
日「あ!そうだったっけ?」
颯「自転車できたから用意できたら後ろ乗って」
日「りょーかい!」

急いで準備する。

残念ながら私には女子力というものがない。可愛い水着も、可愛い浴衣も、可愛い髪飾りも、持っていない。

日「お待たせ!」

そう言ってわたしは自転車の後ろに乗る。

颯「浴衣着てこなかったのー。」
日「はいはい女子力なくてすみませんでしたねー」
颯「来年絶対浴衣な。」
日「え、うーん。まあいいけど。」
颯「下り坂だから俺につかまって。」
日「わっ!」

どんどん加速する。
それと共にどんどん風が強くなる。

日「じゃあ颯くんも来年浴衣ね!」
颯「さあそれはどうかな。」
日「来年は私も中学生かー。」
颯「こんなちびが中学生なれんのか?」
日「うるさい颯くんも結構小さいじゃん!」
颯「中学どこ目指してんの。」
日「答えになってない!まあ、緑ヶ丘学園あたり?」
颯「湊と一緒じゃん。」
日「そうなんだ。」
颯「ほんとにいつも一緒だよね。」
日「別に望んでないんだけどなぁ。」
颯「望んでないからこそ一緒になるんじゃない?」
日「まあ、別に一緒になりたくない訳ではないし別にいっか。」
颯「そっか。」

それから一年後。

日葵と湊は無事緑里ヶ丘学園に、合格した。

もう中3かー。

中高一貫校に通ってはいるが高校に進むにはテストがある。

俺の成績だとその調子で行けば普通に合格できる。

でも最後まで何があるか分からない。

先生からは心は受験生で行けと言われている。

だから勉強で忙しくて日葵とは入学式以来会っていない。

そうして迎えた夏祭りの日。

湊が夏祭りに行ってくるときいて、初めて今日が夏祭りの日だと知った。

日葵と一緒に行けんのかな。

あの日、日葵と一緒に行く約束したんだっけ。

どうだったっけ。

湊が出かけてから数分考えて、結局行くことにした。

自転車に乗って下り坂に差し掛かると、見覚えのある自転車、見覚えのある人ふたりがいた。

あれは、間違いない。

湊と日葵だ。

日葵は湊の自転車の後ろに乗って、湊の、背中につかまって笑っている。

急いで家に帰る。

母「あれ、夏祭り行くんじゃなかったの。」
颯「今日急に用事出来たんだって。」
母「へえ。」

そっか。

忘れられてんのか。

たったの4ヶ月の間とはいえ、日葵は日葵で忙しかったんだし、忘れられて当たり前か。

どうしよう。俺迎えに行くって言っちゃった。

いやでも忘れられてんだから関係ないか。

でももしかしたらずっと待っているかも。

さっきからずっとベッドに寝転がってその事ばかり考えている。



俺らしくないな。

日葵side

夏祭りの日、帰ってきてからレモネードを飲んだ。

私が嫌なことがあった時にレモネードを飲むことを知っている兄ちゃんは、何かあったのと心配してくれた。

私はなんもないよと答えた。


ホントはあるんだけどね。

それから何年経っても、颯くんは迎えに来てくれない。

3年間会ってない。

もう、忘れられたんだよな。

分かってた。中1の夏祭りの時から分かってたじゃないか。

でも、どこか期待していた。

いつか、迎えに来てくれるんじゃないかって。

私から行けばいいのかな。

そんなことも考えた。

でも、もしお前誰とか言われたらどうしよう。

それに颯くんは今年受験生なんだし、あんまり邪魔しちゃダメだよね。

今、私はクイズ研究部に入っている。

そして、体育委員会に入っている。

湊も、変わらずクイズ研究部に入っている。

そして、体育委員会に入っている。

何故か、ずっと湊と一緒だった。

生まれた病院、幼稚園、幼稚園のクラス、小学校、小学校のクラス、中学校、中学校のクラス、高校、高校のクラス、部活、委員会。

7月の金曜日。

部活が終わって、明日から休みだーなんて思いながら湊と一緒に部室を出ようとしたら、放送がなった。

放「体育委員会の皆さん、運動場に集まってください。もう一度言います。体育委員会の皆さん___」

日「うそー呼び出された。せっかく帰れると思ったのに。」
湊「よーし頑張るかー。」

委員会の仕事が終わって、2人で教室に入る。

時刻は17時45分。

日「あ、夕焼け綺麗。」
湊「ホントだ。今日はゆっくり話してから帰ろっか。」
日「そだね。」

2人で窓に寄りかかる。

湊「あのさ。」
日「うん。」
湊「俺お前のこと好き。」
日「.....そうなんだ。」
湊「まあ知ってるんだけどね。この恋が叶わないこと。」

そう。湊は私と颯くんの関係を知っている。

何度か会わせようとしてくれた。

でも、会って傷つくのが嫌で、夏祭りを一緒に行かなかったことを怒られるような気がして、ずっと断わっていた。

日「私たち、付き合おう。」
湊「え、何で。」
日「もう颯くんのこと忘れたい。もうね、毎日のように思い出すの。颯くんのこと。だからもう、忘れたい。」
湊「そっか。じゃあ、俺が忘れさせてあげる…でも、ほんとにいいの?」
日「うん。もういいの。普通のカップルみたいに振舞ってくれていいから。」
湊「…わかった。でも、俺と別れたい時、ほんとにすぐ言っていいし、兄ちゃんと会いたかったら、いつでも会わせるから。」
日「ありがとう。」

時刻は18時。

放「18時になったので、学校に残っている生徒は、急いで帰ってください。」

湊「帰ろ。」
日「うん。」

その帰り、私はレモネードを一口だけ飲んだ。いつもより酸っぱく感じた。

それから、登下校する時は手を繋いだし、ハグだってした。

颯side

7月ぐらいから、湊が日葵のことについてよく話すようになった。

それが苦しくて、切なくて、泣きたかった。

9月10日。

日葵の誕生日。

1万円ぐらいする腕時計を買った。

そして、誕生日、俺は部活をすっぽかして緑里ヶ丘学園に向かった。

門の前で待つ。

一人、また一人と、下校する人が門から出て行く。

そして、10分ぐらい経った頃、湊が出てきた。



…は?

湊は、日葵と手を繋いで笑っていた。

日葵も、笑っている。


なんで。

分かってたのに。

湊と日葵に見つかって欲しくなくて、顔を見せないように急いで引き返した。

同じ電車に乗りたくなかったから、ちょっと歩いた先にある公園で泣いたり笑ったりと表情がコロコロする子供を眺めていた。



やっぱ忘れられたんだな。

涙が溢れてくる。

情けねえなぁ。

?「え、颯何してんの、大丈夫。」

颯「え。」

まそこに立っていたのは拓郎だった。

颯「何で、ここにいんの。」
拓「あー俺に緑ヶ丘学園に彼女いるから。その今日迎えに行こうと思って…いや、俺の事はともかなんで泣いてんのって。」
颯「え、いやちょっと色々あって。」
拓「それに何でここにいんの。」
颯「えーっとまあ、色々あって。」
拓「とりあえず涙吹きな。」

そう言って。ティッシュを渡してくれる。

颯「ありがと。」

はー。ほんとに悲観的な気分に浸っていたのにー。

でも、拓郎のおかげで少し元気になれたような気もする。

俺って結構単純かも。

拓「あーレモネードでも飲む?よく日葵の嫌なことがあった時飲んでるから。」
颯「んー飲んでみようかな。」
拓「買ってくるわ。」
颯「あ、俺も…」
拓「いいってすぐ戻ってくるから。」

数分後、拓郎が帰ってきた。

拓「お待たせ。」
颯「ありがと。」

それから10分ぐらい話して、一緒に帰った。

それから、俺は嫌なことがあった時にレモネードを飲むことが多くなった。

日葵side

卒業式。

日「湊。」
湊「どした?」
日「わたし、もう颯くんのこと忘れられた。全て忘れきれたかって言われたらそうじゃないんだけど、もう良いかなって。」
湊「そっか、じゃあ最後に。」

そう言って湊は優しくキスしてくれた。

湊とは、キスだって、初体験だってした。

本当に、ありがとう____

わたしは、東京大学に合格した。



もちろん湊も。

夢は医者だった。

湊は学校の先生になりたいらしかった。



8月の半ば。

この時期になると、思い出す。



私は自転車の後ろに乗り。

背中につかまって。

風が吹いて。

ある、約束をして____



レモネードが飲みたくなった。

これまでいいことも悪いことも無く、レモネードを飲むのは随分と久しぶり。

大学を出て、近くのコンビニでレモネードを買う。

いつも私が買ってる品種のやつはどれかな。



あ、あった。

レモネードを手に取ろうとすると、、私と同じレモネードを手に取ろうとしていた人と手が重なった。

日「あ、すみません。」

そう言いながら隣の人の顔を見る。

?「あ。」

それは紛れもない、颯くんだった。

日「あ、ジロジロ見ちゃってすみません。」

私を忘れた颯くんを見たくなかった。

サッとレモネードを取って、すぐその場を去ろうとした。

颯side

この顔は、絶対に俺のことを覚えている。

じっと俺を見つめて、驚いたような切ないような顔をしていた。

颯「待って。」

おれは日葵の手を掴む。

振り向いた日葵の顔は驚いていて、その目からは今にも涙がこぼれそうだ。

颯「俺の事、まだ覚えてくれてた?」
日「…うん!」

俺の目からも涙が出てくる。

日「颯くん!…だよね!」
颯「うん。」

コンビニの飲料コーナーの前で2人して泣いてるなんて恥ずかしすぎるからとりあえずレモネードを買って近くの公園のベンチに座った。

日「覚えててくれてたんだ。」
颯「忘れるわけないじゃん。」
日「約束、破っちゃった。」
颯「知ってる。」
日「え、何で。」
颯「手繋いでるとこ見た。」
日「そうなんだ…ねえ、今からじゃもう、ダメ?」

そういって日葵は俺の肩に頭を預ける。

颯「そんな可愛いことされたらいいよって言いたくなるけど日葵には湊がいるんでしょ。」
日「あ、別れたよ。」
颯「…は?」
日「そもそも湊と付き合った理由は颯くんを忘れたかったからだから。まあ結局忘れられなかったけど。」
颯「じゃあ、今から付き合う?」
日「…うん!」

頬を赤く染めた日葵は、とても可愛かった。



って言うのは、7年後の話。

今、幼い顔をした俺たちはかき氷を頬張っている。



って言うのは8年前の話。

今俺たちは裸になってベッドですやすやと寝息を立てて寝ている。




日葵side

私は颯と再会した日、レモネードを飲んだ。




いいことがあった時、
嬉しいことがあった時、
私はいつも、レモネードー飲む。

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この作品を読んでくれた皆様へ

どうも、作者の謎の生命体です。

今まで読むだったのですが、遂に書く側になりました。

この小説のネタは、眠れない夜にふと思いついたものです。

最初は、レモネードは登場してきませんでした。

しかし実は作者も、嫌なことがあった時のレモネード飲むくせがありまして。

なんか物足りないなーと思ってふと思いついたのがれ嫌なことがあった時レモネードを飲むということでした。

この作品を打っているあいだ、とても楽しかったです。

昔から小説を書くのが好きでのー小説のネタが書いてノートがろ沢山あり、保管に困っています。

なのでまだ小説は書けるかなと思ってます。

レモネードの番外編も出そうと思っています。

日葵と颯の日常みたいな、短編集を作ろうと思っています。

本当に、本当に、読んでくれてありがとうございました。

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