徐々に速くなる呼吸の中で、無理やり声を発しているけれど、回した腕にも体に力が入っていない。
背中をゆっくりとさすって落ち着かせながら、


『うん。また苦しくなるよ、ゆっくり呼吸して。』


ベッドにもう一度寝かせようとすると、離されまいと腕に力を入れている。首を横に振って、ありったけの力で抵抗しているけれど、両腕を押さえてベッドに横にする。


すぐに、かけられていたタオルで顔を隠して背けている。なんと言うべきかわからない。でも、そばにいるだけでも良いのかも知れないと思った。


しばらくして、荒かった呼吸が少しずつ穏やかになっていくのを窺い(うかがい)ながら、声をかける。


『今まで見てきたどんなものより、難しいよ。
正解を探せば探すほど、わからなくなる気がして。』


『正解なんて、、ない。先生は計算とか理論ばっかりで考えるから。』


小さな声でささやく。


『ただそばにいるだけで、幸せを感じられるから、、
それが一緒にいる理由じゃだめなの?
確かにゆうかは、お荷物だし、泰志の足を引っ張ってばかりだけど、わがままで良いって言ったのは、泰志じゃん。』


いまだ残る点滴の跡にそっと触れる。


『そうだったね。でも、俺は泣いてるゆうかも、顔を真っ赤にしてるゆうかも、可愛くて仕方ないよ。だから、通常運転がわがままなゆうかでも構わない。』


そういうと、顔をわかりやすくほころばせる。