『ごめんね、行こう。』


『うん。』


泰志は手を差し出そうとしたけれど、わざと見えていないふりをして、少し前を歩いた。


車に乗っても、看護師さんに言われたことが無駄にリピートして、頭から離れない。


少し気を抜くとまた込み上げてきそうで、ギュッと奥歯を食いしばる。


シートに身体を預けて目をつぶっていると、


『どこか痛い?』


と聞かれる。力が入りすぎて眉間にシワが寄っていたかもしれない。


『ううん。痛くない。』