『めまいどう?』


寝ていたベッドを整えていると、泰志が帰り支度をしながら聞いてきた。


『大丈夫、少しなら歩けるから。』


ゆっくりと歩きながら、待合室を通り過ぎて自動ドアを出ようとしたところで、泰志が


『あっ、カルテ直すの忘れた。』


"3分で戻ってくるから"と言って、病院に戻ってしまった。
風除室にある小さな椅子に腰掛けて待つ。


すると廊下からこちらへ向かって誰かが歩いてくるのが見える。
雰囲気からして患者さんではなさそうだけれど、


目を凝らしていると、すぐに誰であるかはわかった。


前を通る瞬間にチラッと視線を向けて立ち止まる。


『ちょっと風邪引いたくらいで、病院で休ませてもらえるなんて医者に寵愛されてる人の特権ね、ああいう場所は本来もっと重症な人がいるところよ。彼氏とイチャイチャするためにある場所じゃないの。』


相変わらず、早口で言うと勝ち誇ったような顔で去って行った。


(そんなふうに思われてたんだ、、)


なぜ、ただの患者の私にそんな事を言うのだろうと疑問に感じながらも、心底ショックだった。


熱くなる目頭を押さえて呼吸を整えていると、胸の奥がきゅっと苦しくなった。