「別に可愛くないもん」


 私は風船のようにプーッと頬を膨らませてそう言った。


「はいはい、よしよし」


 そんな私のことを一輝くんは、やさしく頭を撫で続けた。


 なんか。
 なんか、うまく一輝くんにかわされてしまった。

 結局、覚悟の夜が何なのかわからないまま公園を出て、一輝くんと一緒にスーパーに寄ってマンションに帰った。

 結局、そのときも一輝くんは何も教えてくれなかった。