飴玉ひとつ、メロウ味



***



「おい、起きろ!凛っ!」



遠くの方で、聞こえてきたその声が徐々に近づいてくる。

ゆさゆさと身体が揺らされている。



「んっ......」



まだ、重たい瞼を開けると、目の前に拓海の綺麗な顔があった。



「お前まで寝てどうすんだよ!さっさと帰るぞ」



その言葉に、私も寝てしまったんだという事を理解した。


外は既に暗くなりかけている。

時計を見ると、5時半はとっくに超えていた。



「はっ!ごめん!」



まさか、起こさなかったからこれで負けるってことないよね......?

私も寝ちゃうとは思わなかったーー。



「こ、これはセーフ......だよね?」


「あ?なんの事だ?」



よかった、起こさなかったのは命令違反にはならないらしい。



「早く帰るぞ」


「あ、待って」



スタスタと、先に教室を出た拓海を追いかけて歩いた。


ふたり分の足音が校舎に響いている。