「ダメ、離れたら凛の負けになるけど?」
耳元で囁かれた声に、私は諦めるしか無かった。
でも、こんな状況......っ。
緊張で1ミリも身体を動かせない。
ドキドキと大きく脈打つ鼓動が鳴り止まない。
「もしかして、ドキドキしてる?」
「......っ!?」
見事に言い当てられて、返す言葉も無い。
だけど、私がまだ出会って数日の、拓海相手にドキドキするなんて、ありえないんだから。
ーー絶対に認めない。
「俺の事、好きになった?」
「っまさか!」
まるで、二重人格にも思える変わりっぷりだ。
その余裕そうな話し方が、余計に私の心をくすぐっていく。
私の反応を見て、楽しんでいるだけだーー。
だけど、ドキッとしてしまうのは自分ではどうしようもない。
既に自分の気持ちをコントロール出来なくなっていた。
私は、初めて拓海に“恋”をしていると自覚した。



