今度は短くため息を吐き、そのまますぐ横の壁に寄りかかる。

最初から、バーチャルな恋愛しか経験がないと言っていた萌。

それが間違いないであろうことは、この一週間、彼女と過ごしてきた時間で、充分わかっていたはずなのに…そんな彼女に、俺は一体何をしてしまったのだろう。

もちろん、今日この部屋に誘ったのは、こんな風にするつもりだったわけじゃない。

このまま、萌に嘘を吐き続けたままでいたくなかった俺は、今夜すべてを話そうと決めていた。

…いや、もっと正直に言ってしまえば、萌との契約の一週間が終わっても尚、彼女との関係をこのまま繋ぎとめる術はないかと、安に時間稼ぎをしたかった。

ところが、ついしてしまった2度目のキス。

そして真実を伝えた後に、期せずして萌の口から自分に対する想いが伝えられた瞬間、この一週間、ずっと押さえこまれていた、彼女に対してのタガが外れてしまった。

微かに震えていたのを頭の片隅でわかっていながら、萌に堂々と触れる許可をもらえたような気がして、浮き立つ気持ちを押さえられなかった。

萌が、その怖さに耐えきれず、子供のように泣きじゃくり出すまで…。

『これじゃ、強姦と一緒だ』

吐き捨てるようにつぶやくと、耐えきれず彼女の姿から目をそむき、窓の外に視線を向ける。

そもそも、こんなややこしいことになったのも、元はと言えば、一年前のあの日…あの人の口車にまんまと乗せられてしまったことから始まった、偽りの自分。

視線の先に広がる、都会の真上にある月を見上げながら、この生活が始まった一年前に思いを馳せた…


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