いつの間にか辺りも静かになっていた。
どうやら雨も上がったようだ。

飲み過ぎなのか寝不足なのか、頭がぼーっとしている。時計を見れば4時だった。徹夜をしたのは久しぶりだ。
ああそういえば今日は早番なんだった。
咲耶姫様とすっかり話し込んでしまったが、そろそろ帰らないといけない。明るければ道路に沿って山を下りられるだろう。ここがどこか分からないけど、出勤時間までにはきっと帰れるよね。帰れなかったらどうしよう。

そこまで考えて、私は考えるのをやめた。
頭がふわふわしているからだ。
少し風に当たったほうがいいかもしれない。

すっかり乾いた服に着替えをして、私は静かに襖を開けた。冷たく澄んだ空気が体にまとわりついて清々しい。そのまま外に出てみると、適当に放置していた靴もすっかり乾いていて私は笑いが込み上げる。
これもきっと火の神様が燃えたおかげに違いない。影響力ありすぎ。

少し肌寒いけれど雨も上がって、日の出前の薄明かりの空にはまだ月が煌めいているのが見えた。
こんなに綺麗な世界でこんなに綺麗な神様と女子会をしただなんて、なんとも不思議な気分だ。それに、神様も私たちと同じように恋をして悩んですれ違って、なんだかおかしくて笑えてしまう。

「何がおかしい、人間よ」

クスクス笑っていると突然声をかけられ、私は飛び上がるほど驚いた。

「咲耶姫はどうした?」

「はっ、暑くなってきたと思ったら火の神様!」

突然現れた火の神様の手には、先程と同じキキョウが握られていた。

「……お見舞いに来られたのですか?」

「ふん、見舞いではない、夜這いだ」

「よば……、えっ?よば、い?!」

火の神様は腕を組むと、ふんとそっぽを向いた。
これは怒っているのだろうか、ふて腐れているのだろうか。